とってぃののんびりクラシック日和

趣味のクラシック音楽関連を中心に、のんびりと綴っていきます

オペラ「カルメン」@新国立劇場、7/3・17

早速最近のオペラ鑑賞レビューを載せたいと思います。

新国立劇場で上演された「カルメン」です。

www.nntt.jac.go.jp

 

音楽・ストーリーがあまりにも有名な「カルメン」ですが、今回のプロダクションはこれをアレックス・オリエが現代の東京に舞台を置き換えて斬新な演出で描くという触れ込みで作り上げられました。

アレックス・オリエと言えば、2年前の「トゥーランドット」で、トゥーランドット姫が自害するという衝撃的な(?)結末をぶち上げた御仁で、当時その演出が賛否両方の議論を巻き起こした記憶があります。

指揮はその時の「トゥーランドット」と同じく、大野和士芸術監督が務めます。

 

しかも、今回は本公演だけでなく、「高校生のための鑑賞教室」とびわ湖ホールでの公演を合わせると14回も上演される(!)という力の入れようです。

(そのうち「高校生のための~」は新型コロナ疑いの発症者が公演関係者に出てしまったとのことで、2回中止になってしまいました)

 

さて、今回私は7/3と17の2公演を見に行きました。

というのも、大人気の「カルメン」のことだから、チケットはすぐに売れてしまうだろう…という予想のもと、発売と同時に1公演分確保していたところ、その後U25チケット(売れ残りの分を若者に安く売る制度)が発売されるという予想外の展開になったため、折角なら…ということでもう1公演分買った、という理由です。

因みにこのU25チケット、通常であれば2万円以上するS席を5000円で買えてしまうので、若い方々には超オススメです。

7/3は3階席真ん中付近だったので全体を見渡し、7/17は1階席右端だったので個々の演者の表情や指揮者の動きを観察するという感じで見られました。

 

さてさて、肝心の公演内容について。

 

<演出面>

「斬新なカルメン」という触れ込みで行われた今回の公演ですが、私の第一印象は「無難なところに収まったな」というところでした。

確かに、カルメンをスター歌手、ホセを私服警察官、エスカミーリョをファッションモデル(?)に見立て、ライブやファッションショーを登場させる演出は見た目に面白くはあったのですが、全体のストーリーの解釈としては従来のものを覆すようなものは見られず、そういった意味ではあまり斬新さは見られなかったような気がします。

むしろ、2年前の「トゥーランドット」の方が、「愛情からではなく、自身の持つ権力を求めて求婚してきたカラフに絶望して自ら命を絶つトゥーランドット」という新たな視点を提供してくれたという点で「斬新」だったと思います。

 

<音楽面>

まず特筆すべきはカルメン役のステファニー・ドゥストラックでしょう。

同役を得意とするフランス人歌手で、安定した声量、卓越した演技力等、素晴らしいカルメン役を披露してくれました。

また、大野監督&東フィルも彼女の歌唱に合わせて自由自在にテンポを操るなど、カルメンを引き立てるべく柔軟かつ息の合った演奏を見せてくれました。

 

ドン・ホセ役は、7/3の公演で本役の村上敏明さんが不調のため、演技と台詞のみ行い、歌唱の部分は舞台袖にカヴァーの村上公太さんが出てきて歌うというハプニングがありましたが、緊急登板にもかかわらず若々しく伸びやかな歌声を響かせてくれました。

7/17の方は敏明さんが無事復帰し、流石の貫禄ある歌唱でしたが、やはり不調なのか、最終盤になってやや高音が出にくくなる場面も見られました。(ただ皮肉にも、その様子が鬼気迫るドン・ホセと重なって見えたのは私だけでしょうか…。)

 

エスカミーリョ役はアレクサンドル・ドゥハメルというこれまたフランス人。「闘牛士の歌」は声量不足が明らかで、周りの人が歓声を上げて煽る演出と全くマッチしていなかったのですが、そもそもこの歌が本人に合っていなかったのと、あるいは舞台セットの関係で後ろの方から歌わざるを得なかったのが原因のような気がします。

その後のホセとの対決シーンやカルメンとの2重唱などではしっかりとした歌声を聞かせてくれました。

 

その他の日本人歌手や合唱の方々も息の合った歌唱を披露してくれたのですが、中でも児童合唱の皆さんは、外国語の歌を覚えるだけでも大変な上に演技まで付けなければならないという、私の小さい頃だったら絶対にできなかっただろうな…という芸当を立派に務められていました。

 

レビューは以上となります。何はともあれ、このコロナ禍でいつ公演が中止になってもおかしくない環境下でプロダクションを作り上げられた全ての公演関係者の努力に敬意を表したいと思います。

 

 

次回の鑑賞は間が空いて、8/7(土)の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」@東京文化会館です。休憩を含めて5時間半という長丁場ですが、何とか乗り切りたいと思います!