とってぃののんびりクラシック日和

趣味のクラシック音楽関連を中心に、のんびりと綴っていきます

11/21ニュルンベルクのマイスタージンガー@新国立劇場

こんばんは、とってぃです!

一昨日のことになりますが、新国立劇場ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」を観ました!

www.nntt.jac.go.jp

 

待ちに待った、という言葉がまさにふさわしい公演でした。というのも、元々昨年6月に予定されていた公演が新型コロナの影響で中止、その後今年8月に東京文化会館で予定されていた公演も関係者の発症により中止と、2度の中止を経てようやく開催が実現できたからです。

私はワーグナーが好きでよく聴くのですが、実は劇場にワーグナー作品を観に行くのは2019年新国「タンホイザー」以来2度目でした。東京で「マイスタージンガー」が上演されるのは16年ぶりとのことで、次にいつ観に行けるかわからない、ということで非常に楽しみにしていました。

ワーグナーということもあってか、お客さんはいつもと比べるとご年配の方が多く、私のような若輩者は少なかったように思います。

公演時間は2度の30分休憩を含めると何と6時間弱の長丁場。14時開演だったのですが劇場を出るときには20時を回っていました。(座りすぎてお尻の骨が痛くなりました…)

 

そんなマイスタージンガーですが、一言でまとめると、歌手もオケも幕が進むごとに調子がどんどん良くなり、時間の長さを感じることのない素晴らしい公演でした!

(3幕が時間としては一番長いはずなのに、体感としては一番短く感じられたのは演奏者の調子が上がったからでしょうか、それともワーグナーの作曲が巧みだからでしょうか…?)

 

【内容について】

そもそも音楽やあらすじ等をあえて予習せずに行ったのですが、「タンホイザー」の時と同様、あまりに有名な前奏曲で出てくるメロディが劇中でライトモティーフとして多用されているため、「このメロディはこういう意味があったのか!」という種明かしの連続を体験するようで楽しかったです。

また、劇中に「トリスタンとイゾルデ」の冒頭の和声が登場したり、ザックスがベックメッサーの歌をハンマーで邪魔する場面の音楽が「ジークフリート」1幕の「鍛冶の歌」に似ていたりと、ワーグナーの他の作品との関連も見られるという面白さもありました。

物語としては、ザックスに導かれるヴァルターの成長という流れによって提示される、「それまでの伝統や形式を重んじつつ、新たな才能や考え方もうまく採り入れることが重要」というコンセプトが、このマイスタージンガーの世界だけでなくどの分野においても通ずる概念に思えて素敵だなと思いました。

 

【歌手について】

外国人歌手については、まずはハンス・ザックス役のトーマス・ヨハネス・マイヤーさんがとにかく安定していました。特に3幕はほぼ出ずっぱりなのによく体力がもつな…と感心してしまいました。

ヴァルター役のシュテファン・フィンケさんは、最初の方は音程が定まらなかったり声が出にくい場面もありましたが、次第に調子が出てきて3幕の「栄冠の歌」にしっかりとピークを合わせてくれました。

ベックメッサー役のアドリアン・エレートさんは演技の上手さが光り、情けなく敗れ去るベックメッサーをコミカルに演じてくれました。

邦人歌手の中では、豊かな歌声を披露して揺れ動く感情を見事に表現してくれたエーファ役の林正子さんや、明るく伸びやかな歌声が役にピッタリで、長丁場の歌もバテずに歌い切ったダーヴィット役の伊藤達人さんが印象に残りました。

なお合唱団は毎度のことながら安定した出来でした。

 

【オケ・指揮者について】

オケは東京都交響楽団、指揮は大野和士芸術監督でした。

いつも思うのですが、都響の弦って何故あんなに太くて力強い音が出るのでしょうか…?その特徴が、ボリューミーな管楽器と相まってワーグナーにピッタリでした。

前奏曲が特にそうだったのですが、全体的にゆったりしたテンポで、ワーグナーならではのスケール感を見事に表現してくれました。

 

【演出について】

イェンス=ダニエル・ヘルツォーク氏による演出は、舞台が劇場に替わっていて、劇場の中に劇場があるという不思議な空間になっていましたが、特に破綻しているところはなく自然な読み替えがされていたと思います。

また、回り舞台を使うことで、例えば劇場の舞台を前後両方の視点から見せたり、舞台転換をスムーズかつ視覚的に楽しく見せてくれたのも印象的でした。

ラストのシーンでちょっとしたハプニング演出があったのですが、ラストでそのような演出が起きると個人的には音楽を素直に楽しめなくなってしまうので、あまり好きにはなれません…。(最近の新国で言えば、カタリーナ・ワーグナー氏の「フィデリオ」然り、アレックス・オリエ氏の「トゥーランドット」然り…)

 

 

因みに今回の鑑賞で、「さまよえるオランダ人」以降の主要ワーグナー作品はDVD等の映像での鑑賞も含めると、残すところ「パルジファル」のみ未鑑賞となりました。こちらは来年びわ湖ホール二期会でそれぞれ上演機会があるとのことなので、どちらか一方だけでも是非行きたいところです…!